シャカイを、つくる。(仮)

僕たちが生きるこの社会をより良いものにするために必要だと思ふことをだらだら考え、提案する。そんなやつです。よろしく、どーぞ。

生まれて初めて言います。今回ばかりは選挙行きましょう!(笑)

さて、日頃から研究の関係上政治参加について考える機会の多い僕ですが、ついこないだRCCの取材でも答えたように、

選挙に対する基本的な構えとしては、
「投票は政治参加の重要な手段の一つではあるけれど、その全てではない」であり、
投票に行くかどうかについて(自分は行くけど)他人にとやかく言うつもりはない

……というものです。

投票に行く行かないに関わらず、選挙結果には有権者全員が責任を有しているのであって、その責任に自覚的な人に対して「投票に行ってない」というだけの理由で政治的に未熟だと切って捨てるのはナンセンスだと思っています。

そんな僕が、今回は声を大にして言います。

皆、今回ばかりは投票に行きましょう!

それは、なぜか?

今回の選挙はただの参院選ではなく、改憲に関わる一次予選だからです。

ご存知の通り、現在の与党は改憲をしようとしています。

しかし「憲法を変える」ということがどういうことか、あまり分かってない人も多いのでは?と思います。普通の法律を変えるのと何が違うのでしょうか?ここを理解しておかなければ、今回の参院選が持つ意味は理解できないでしょう。
というわけで、僕なりの理解の仕方で……ですが、憲法を変えるということの意味について整理してみたいと思います。

立憲主義と民主主義の緊張関係

法律をつくったり変えたりするのは政治家(=為政者)の役割ですよね?僕たちの生活は様々な法律によって(良い悪いは別として)縛られるわけですが、これが許されるのは政治家が国民によって選ばれた国民の代表だからです。

これに対して憲法というのは「為政者がやらなければいけないこと/やってはいけないこと」を予め定めておいて、これに反する法律や政策はできないようにしておく……という性質のものです。

憲法が国の最高法規(=一番えらい法)と言われるのはこのためですね。

昨年の夏、安保法制案をめぐる議論のなかで盛んに「立憲主義」という言葉が語られました。当時よくなされた立憲主義の説明は、
 「立憲主義とは、憲法によって権力者を縛るという考え方」
というものでした。そして、本来権力者を縛るはずのものである憲法を軽視したということで昨年夏、与党による安保法制案の強行採決が「立憲主義に反する」と批判されたわけです。

しかし、考えてみれば与党を選んだのは私たち国民です。
それでは、仮に「国民から100%支持された、民意を完全に反映した政権」であっても、為政者は憲法に縛られるべきなのでしょうか?

答えは、イエスです。

立憲主義の考え方では、「民意を完全に反映した法案、政策であっても憲法に反するものは無効」というものです。つまり、ある意味、立憲主義は為政者だけでなく(国民主権を採用しているという意味で)日本の「権力者」である私たち有権者も縛っているといえるわけです。

ちょっと変な感じがしませんか?
それって民主主義の理念と対立するのでは……と思いません?

じゃあどうして一見、民主主義と対立するような立憲主義を、日本を含む多くの国は採用しているのでしょうか?

それは・・・・・・

一時の世論や社会的な感情の高まりによって、長い人類の様々な歴史の中で蓄積されてきた人智である平和の希求、基本的人権の尊重などが掘り崩されないように、どんな状況でも「これだけは絶対に守りましょう」という防波堤を予め構築しておく必要があると考えられているため
です。

実際、国民の選挙によって選ばれた政権が、人々の基本的人権を踏みにじる政策を行った例というのは枚挙に暇がありません。

(繰り返しになりますが)だからこそ、権力者、とりわけ為政者が「何があってもやってはいけないこと/やらなければならないこと」を憲法で予め決めておこうということになっているわけです。

憲法を変えるというのは、他の法律を変えるのとは全く違う意味を持つ

さて、そうはいっても「絶対に変えることのできないルール」なんて不自然極まりないですよね。時代に合わせてルールが変わっていくのはおかしなことではありませんし、むしろ既存のルールの正しさを妄信することの方が不健全だと思っています。何を隠そう、僕は改憲派です。(自民の改憲草案には断固反対ですが)

なので当然、憲法も変えることができるようになってます。

しかし!

憲法を変えるということは、長い人類の歴史的な経験の結果として蓄積された「基本的人権を守るためのルール」に変更を加えるということになるわけですから、「飲酒ができるのは18歳に変えましょう」なんていう単なる法律の変更とは、その重みが全く異なるわけです。

だからこそ、憲法を変える時には

第九十六条  この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。


という、ものすごい面倒くさい手続きを踏まないといけないことになってるわけです。

憲法変えるよ?衆院議員の皆さん、いいですか?いい?いいよね?過半数がいいって言ってもダメだよ?3分の2!いい?よっしゃ。じゃあ、参院議員の皆さんは?いい?3分の2……いい?よしよし。じゃあ、最後!国民の皆さん、いいですか?過半数……いいね?ほんまにいいんやね?よっしゃ!」

……とまあこれだけ念には念を押して「みんなで決めた」という確認がとれてはじめて憲法は変えることができるようになってるわけです。それだけ憲法というものは国のあり方の根幹に関わる重要なルールなんだという評価がされているというわけですね。

憲法を変えるということがどのくらいデカイことか分かって頂けたでしょうか?
よく「投票したって何も変わらない」という人がいますが、今回の選挙に限って言えば、それは大間違いです。今回の選挙次第では、今後の日本の根幹となるルールが大きく変わりうるのです。それは、日本を根底からつくり変える可能性を持つということです。

さて、参院選の予想ではこのままいくと改憲派の党で参議院議席3分の2が占められるようです。

まあ、それはそれでいいでしょう。
みんなが選んだ結果、「憲法改正の発議」→「国民投票」という流れで憲法のあり方をみんなで考えて決めて行けばいいわけですから。

自民党憲法改正草案は、単なる改憲ではなく立憲主義そのものを問い直すものになっている

一方で……

みんな、自民党憲法改正草案よんでますか??

constitution.jimin.jp


僕は自民党憲法改正草案をはじめて読んだとき、「マジか!!」と思いました。
それは何故かというと、自民党憲法改正草案は憲法立憲主義を事実上骨抜きにするものになっていると感じたからです。

改憲をめぐっては9条について活発に議論されていますが、これは「為政者が何があってもやってはいけないこと/やらなくてはいけないこと」の内容・リストをどう考えるか……という議論です。

しかし、自民党憲法改正草案では、この「為政者が何があってもやってはいけないこと/やらなくてはいけないこと」が記述されると同時に、国民の義務が強調され、これが基本的人権を制約する根拠となりうるような記述が非常に多いんです。

繰り返しますが、立憲主義の本来の理念は国民の基本的人権を保障するために「為政者がやってはいけないこと/やらなくてはいけないこと」をリスト化することで為政者を牽制することであって、国民の義務をリスト化し基本的人権を制約しうる条件を設けることではありません

これでは、自民党憲法改正草案が現実のものとなった場合、僕たちの国は(控えめに言っても)「立憲主義を部分的に放棄する」ことになると評価せざるをえません。

つまり、今回の参院選は、「憲法改正の一次予選」であると同時に、「日本が立憲主義を今後も採用するかどうかが問われる選挙」でもあるわけです。


改めて、言わせて下さい。

みんな、選挙行きましょう!

立憲主義そのものを問い直す選挙」なんていう、日本史上初のめちゃめちゃ大事な「まつりごと」に関われるなんてことは、この先の人生でなかなかあるものじゃないですよ。

それでも選挙には行かないという方、
せめて、自民党憲法改正草案の対比表を見てください。

僕からすると、「立憲主義をやめる」ということは、「集団的自衛権を認める」なんて比較にならないぐらい最悪です。生存権とか表現の自由とか、そういう基本的人権が保障されるという建前を失うわけですから。

でも勿論、立憲主義そのものをやめるべきだという意見の方もいるだろうと思う。
「草案よんだけど、ナガイが言うほど立憲主義に反してなくない?」と感じる人もいるでしょう。(っていうか、僕の杞憂であることをマジで望みます)

だからこそ、みんな、草案よんで、各々の意見もって、投票行きましょう!

昨年の夏、メディアで散々立憲主義がどうの改憲がどうのって騒いで、あれから1年たった今、「草案を読む時間なかった」なんて通らないですよ。
あとになって、「こんな憲法になるなんて思わなかった!!」なんて無責任なこと言っても遅いですよ。

どの候補者、党を支持するにしても、みんなで考えて、みんなで決めましょうよ。

人の行為にあーだこーだ言うのを嫌う僕が「選挙に行こう」なんておせっかいなこと言うのは、多分後にも先にもこれが最後だと思います。(わからんけど)

うざいなーと思われるでしょうが、それだけ重要な選挙だと(少なくとも)ナガイは考えているとご理解下さい(笑)