シャカイづくりの基本中の基本!「最低生活」を、考える!
最低生活って??
さて、この記事のタイトルにも入っている「最低生活」という言葉について、どれくらいの人がその意味を知っているのでしょうか?今後のこともあるので、まずはこの確認、定義づけをしておこうと思います。
「最低」という言葉から、「どん底」の生活という印象を持たれる方もいるかもしれませんが「最低生活」とは人間らしい「最低限度の生活」という意味であって、むしろポジティブな概念です。国際的には国民の「最低限度の生活」を、国の責任のもとに保障する概念として19世紀後半よりイギリスのウェッブ夫妻を中心に「ナショナルミニマム」として提起されました(シドニー&ベアトリス・ウェッブ,高野訳1927)。(※詳しい歴史についてここで整理しても仕方がないので、関心のある方は 『社会福祉の歴史―政策と運動の展開』あたりを読んで頂ければ、ナショナルミニマムの概念の成立過程をかなり詳しく確認できます。)
- 作者: 右田紀久恵,古川孝順,高沢武司
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2001/12
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まあ、簡単に言えば、「すべての国民がそこそこ幸せな生活を送れるように、国が色んな制度をしっかり整えましょう!」ということです。これが日本では憲法25条に「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(=生存権)として明記されていることは皆さんご存知の通り。
http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM#s3
でもってこの生存権の思想を基本理念として様々な日本の社会保障制度はつくられているわけです。
まとめると……
「最低生活」とは
◎「最低」(どんぞこ)な生活ということではなく、人間らしい生活のことであり、
◎自助や共助ではなく、様々な社会保障制度による公助での保障を目指すものということになっていることを理解してもらえればOKです!
しか~し!ここまで読んで頂いた方には当然次のよう疑問をもたれる方も多いと思います。
Q何故、自助や共助ではなく、公助で保障するのか?
これは素朴な疑問として当然ありえますよね。「自分の生活くらい自分でなんとかするがな!」「困った時は家族や親せきや地域で助け合えばよろしいやん」っていう人もいるでしょうし、実際それでなんとかなってる人も多いはず。今後詳しくみていきますが、個人の生活を保障するための制度づくりってとっても「面倒」。しかも会ったこともない他人の生活を税金使って保障する(=知らない人の生活を負担する)ってことに違和感を感じる人もいて当たり前ですよね~。
Q「人間らしい生活」といわれても抽象的でよく分からないし、個人の価値観によって違うのでは? これもよく分かる疑問です。「人間らしさ」や「そこそこ幸せに生きる」ということがどういう状態か……ということに関しては100人いれば100通りの考えがあるでしょう。これを具体的に社会的な制度や施策として保障するということになると、ある特定の価値観を全ての人におしつけることになりかねないのでは?という懸念も生じますよね~。
Q最低生活を国が保障するっていう理念を受け入れたとして、どうやって保障するのか? 実は、国民の最低生活を保障するための制度のありようというのは国によって千差万別。これまでも歴史的に様々な方法が用いられてきたわけです。そして、残念ながら、「どんな時代、地域でもこの方法を使えば最低生活保障は達成できる!」という万能薬は今のところ見つかっていません。今後も様々な取り組みを行うなかで制度を発達させていかなければならないわけですが、これまで試されてきた様々な制度や方法の長所や短所を理解しておかなければ、これからどのような制度を育てていけばいいのか分かりませんよね。
……とまあ、ざっと考えただけでこれくらいの疑問は当然生じます。こういう点については学校では(よほどマニアックな先生でない限り)教えてくれないので、こんなことを考えたことすらないという人も多いでしょう。
一方、今この日本で生活している人のなかで、日本が採用している「最低生活」の理念やら制度と無関係な人は一人もいません。この、「無関係な人はいない」というのは色んな意味があるのですが、例えば僕たちは生まれてから今に至るまで(頼みもしないのに)予防接種を受けさせられたり学校に通わされたりしましたよね?また、僕たちはスーパー等で商品を買うわけですが、完全に自由に交換を行っているわけではなく色んな法律で「ヤバイ商品」が市場に出回らないように規制されていたりします。
こんな風に、(時に「お節介」にも感じるようなことも含んで)私たちの生活は国の法律や制度で規制されてるわけですが、そうした規制を正当化する根拠、背景として「最低生活」の理念があるわけです。でもってこうした制度は僕らが日々払っている税金によって支えられているわけです。つまり!最低生活の理念やそれに基づく制度についてよく知らないということは……
「最低生活」の定義によって僕たちの日々の生活は影響をうけるし、そのための制度がどれくらい役に立っているかよくわからないのに、税金は負担させられている
……ということになります。
なんか、腑に落ちなくないですか?(笑)。
自分達の生活を(ある意味)「決められている」ことも何となく腹が立つし、どうせなら納得して税金を払いたいってもんです。
……というわけで、このブログでは手始めに最低生活の意味や、現行の制度の役割や問題点などを紹介していくことを通じて、一人でも多くの人と「最低生活を、考える。」ことができたらな~と思っています。
よろしく、どーぞ。